「誠実に生きる」 それをモットーに今まで生きてきた。 父親は友人の借金の保証人になり、借りた本人は逃げ、父親が借金を返すことに。 母親もパートで働いてくれている。 自分も学生ながらにアルバイトを行い、細々と暮らして、少しずつ借金を返している。
「よぉ、オヤジさんはいるかい?」 「いえ……」 「そうか」 今日も借金取りの人が家にやってくる。 「俺がこんなこと言うのもおかしな話だが……押し付けられた借金だってのに逃げ出さずに返し続けている。 お前ら家族の評判は俺らも徹底的に調べた ……逃げたって追い込みかけるつもりはねえぞ」
「”お嬢”もお前を気に入ってるみたいだしな」 「でも、返さなくてもいい理由にはなりませんから」 「はっ……さすがあの親父さんのガキだな……」 「父さんは、朝まで仕事で帰ってこないと思います。今日も夜は工事現場で仕事だって言ってたので」 「……そうかい」
お金を借りたところがまずかった。 いわゆるヤのつく人たち。 真っ当な利息で商売をしているわけではない。 自分達が返しているお金も、利息にもなってないなどと言われたらどうしようと不安になるが、ある時「元金さえ返してもらえれば、あとは当の本人にケジメとってもらう」と言われたことがある
「一応俺も仕事だからよ、様子を見に来ただけだ 何かあったら事務所まで来な」 「恐らく今週末にはお渡しに行けるかと思います」 「おう、そんときゃオメーも来い お嬢が会いたがってたぜ」 「はい、わかりました」 家の扉が閉められる。 「……組長さんの娘さんか……」
娘さんは自分よりも年下だが、親の仕事柄学校には通えず、家で家庭教師を雇っているらしい。 たまに会うが、同年代の友人など皆無なんだろう。非常に懐いてくれて、自分も妹のようにかわいがっている。借りた側である立場上、そこまで深い関係になりきれないところもあるけれど、良好な関係である。
週末──。 約束通り、父と共に事務所に向かい今月分を包んで返しに行く。 若頭と思われる人が対応する。 「最後の分です お世話になりました」 父が封筒を差し出す。 「おう、ご苦労さん 人の借金とはいえ、返しきるなんて見上げたモンだ だがこっちもメンツがあるんでな 受け取らしてもらうぜ」
封筒を受け取ると、中身を数え約束の分が入っていることを確認すると、近くに控えていた部下の人に渡す。 「これでおたくとの付き合いも今回、まで、か」 「この度はお騒がせしました」 同時に頭を下げる 「借りる時は頭下げるくせに返す時になったらゴネるクズ共が多い中おたくさんはまともだよ」
「利息も取らず元金だけなんて…… むしろこちらが申し訳ないです」 「安心しな、奴のだいたい目星はついてんだ 利息分は元金の25倍。 キッチリ当の本人からとるつもりだよ」 タバコをふかしながら、恐ろしいことを口にする。25倍……。 「親父さん、ちょっと息子さんを借りていいかい?」 「へ?」
「ちょっと息子さんに用事があってね 帰りはウチの若いモンに送らせるんで ……借りて、いいかい?」 若頭さんは顔を近づけると 凄んだ声で言う 父はちらりとこちらを見る 「大丈夫ですよ」 代わりに自分が返事をする。 「お前……」 「だってまずいことはしてないでしょ? 俺は大丈夫だよ」
「わ、わかった……」 父は納得がいっていないようだったが、自分の気持ちを汲んで引いてくれた。 「では私はこれで……」 「おーぅ」 父が事務所を後にする。 「どうか、しました?」 恐る恐る聞く。 「お前、お嬢と最近どうだ?」 何本目か分からないタバコに火をつけ、話し始める 「え?」
「組長の娘さんだよ 最近、会ってるか?」 「いえ……会ってないです」 「なんでだ?」 雰囲気がピリつく。 「……そんな、お金借りた側の人間が、そんな貸してくれた側のましてや、お嬢さんと気楽に会うなんて……」 「ほー……もっともらしい意見だわな…… ですってよ、お嬢」 奥の扉が開かれる
「ひどいですねえ~」 お嬢さんが現れる。 事務所にいた人達が全員一斉に頭を下げる。 若頭さんも、立ち上がり一礼。 自分も立ち上がろうとすると 「あなたはそのままで」 力を入れかけた足が止まる。 「いつでも来てくださいって言ったのに いけずな人ですね」 「そ、それは……」
「今日、この後予定はありますか?」 「いえ……」 「ではこの後、お時間いただけますか? 夕食など」 「そんな、いいん、でしょうか?」 「もちろん」 にこやかに笑うとゆっくりとこちらに近づき、腕を組んでくる 「え……ちょ……」 「いいじゃないですか こういうの憧れてたんです」
事務所を出て、車に載せられ、娘さんの家に向かう。 「あなたの学校に通いたいんですけど 家族のことがバレてしまいますから、行くに行けなくって困っているんです」 「そ、そうなんですか……」 「せんぱい、と学校でお呼びしたいんですけど」 「あと少しで卒業しちゃいますし……」
「そうしたら私も退学します。 あなたがいないのなら通う意味はありませんから 進学はするんですか?」 「大学はお金がかかるので……」 「あら、またウチが”融資”してもいいんですよ? また月に一度は会えるんですし」 「さすがにもう借金は……」 「あら、残念です」
車が止まると、超高級マンションだ。 娘さん曰く職業の都合上、家は複数あるらしい。 「こちらです」 カードキーを使うとオートロックが開き、管理人室から頭を下げる警備員さんが見える。 「ここはうちの組の関係者しかいません」 「そ、そうですか……」 部屋に迎え入れられると物の数が少ない
「やけに物が少ないですね……?」 「ここは私だけが住んでいますから」 「えぇ!?こんな大きいところに……」 「だから1人は寂しいんです」 「そう……でしょうね……」 初めて入る女の子の部屋。 物は少ないが生活感があり、掃除も行き届いていて、所々に女の子らしい小物などもある。
「そんなジロジロ見られたら恥ずかしいです……」 顔を赤くしながら言う娘さんに慌ててすみません、と謝ると 「どこか好きなところに座ってください」 「は、はい……」 3人がけのソファがあったため、控えめに座る。 ジュースを用意してくれたが、テーブルに置くとピッタリと隣に座ってくる。
近い……。 「あの……近くないですか……?」 「……乙女の部屋に呼ばれるということは、どういうことかわかりますか?」 「え……わからない……です」 「次の返済が終われば、あなたとはもう会えなくなるんです」 「そう、ですね……」 「……やっぱり会ってくれないんですね ……それじゃあ」
「私とお付き合い、してくれませんか?」 「え……」 「お付き合いしてくれるなら”融資”ではなく、共有財産としてうちのお金を好きにしてもらっても構いませんよ?」 「そんなことできないですよ……組のお金、ですよね?」 「お父様も了承してます」 「え……」 「あなたの身辺調査は、私がしました」
「お断りするなら…… これはお渡し、できませんね?」 ぺらっと紙を見せる。 「あっ」 「迂闊でしたね…… 返し終わったという安堵に意識がいってしまって、あなたのお父様も”借用書”を受け取り忘れるなんて……」 「渡して……ください……」 「お答え次第、です」 「っ……」
ヤクザの娘さんなんて怖くてお付き合いできない。組の人たちに何されるか分からない。 「……組の者達は、手出しなんかしてきませんよ?」 「っ!」 見透かされていた。 「むしろ……お断りした方が……」 手を重ねてくる 「それともまさか……想い人でも……? ……もしいるんでしたら」
「突然どこかに、消えてもらわないと、 いけませんね? …………さあ これからはここが2人の愛の巣…… このまま愛し合いましょう?」 ブラウスのボタンをゆっくりと外していくと押し倒される。 外は組の関係者ばかり、逃げられない 何より借用書は彼女の手の中。
「避妊具なんてありませんけど ……いりませんよね?」 はぁはぁと息を切らせながら興奮した顔。 外したボタンから見えるのは、反対に清楚な白い下着。 「はぁ……やっと私のモノ…… いただきます♪」 自分はこれから決して返せないものを背負う そしてその人から決して逃げられないんだ 終。
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